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リスケ決断後に何をすればよいか?〜銀行協議の基本〜

リスケ決断後に何をすればよいか?〜銀行協議の基本〜

前回の記事では、リスケの決断のタイミングや基準についてお話ししました。
今回は「リスケを決めたあと、実際に何をすればよいのか」について、銀行との協議の進め方を中心に解説します。
本題に入る前に、改めての確認となりますが、本来「リスケ」という言葉は色々な意味がありますが、銀行融資の話においては多くの場合、返済を止めることを意味します。このブログにおいても「リスケ」=「返済を止める」とご理解ください。

リスケの意味

前回ブログ

1. リスケ実行の方法

前回のブログの通り、数ヶ月後の資金繰りを予測した結果、今がリスケの時期と判断したなら、お金を借りている銀行に返済を止めるお願いをすることになります。
手順はシンプルです。銀行の担当者に現状を説明し、返済を止めたい旨を正式に申し入れます。
説明は、銀行に口頭で実施します。口頭で説明するわけですから、電話でも可能といえば可能ですが、それはさすがに軽すぎます(返済停止という重要なお願いです)。事前に訪問のアポを取り、担当者と対面でお願いするのが礼儀というものでしょう。
ただし、将来の資金繰りを考えた結果、資金ショートが6ヶ月以内だった場合は、一刻も早くリスケが必要です。その際は、電話で状況を伝えてすぐに返済を止めてもらった上で、後日改めて訪問し、リスケに至った経緯を丁寧に説明するのがいいでしょう。

2. リスケ協議の具体的な進め方

ここからはリスケ協議の進め方の話です。時間的余裕を持って返済停止のお願いをすれば、すんなり銀行は認めてくれるでしょうか。ここが一番気になるところだと思います。

良いケースは、「わかりました。御社も大変ですね」と言ってすんなり認めてくれる場合です。
これには、条件があります。月次試算表を毎月提出し、日頃から銀行の担当者とコンタクトを取り、銀行の担当が行内で随時経営状況を報告している場合です。
当然、銀行も経営状況、資金の動向(要は現預金残高)を把握しているのですから、「このような状況なので先手を打って、御行にはご迷惑おかけしますがしばらくの間・・」と相談すれば、多くの場合そのまま認めてくれます。

一方、銀行に試算表も出していなければ、借りた時以来ほとんど会っていないというような場合はどうでしょうか。十中八九言われるのは「なぜですか?」という質問でしょう。借りたものを返さないわけですから、当然と言えば当然ですね。その時は口頭だけでなく、何らかの資料も交えて、リスケをする他ないことを説明する必要があります。この時の説明、提出資料の準備は骨が折れるものです。このような状況では、当社はじめ信頼できる専門家に支援を求めるべきでしょう。

2つの両極端なケースを挙げましたが、もちろんその中間もあります。試算表は送付しているが、銀行の担当とはあまり会っていないケース。試算表は出していない、もしくは数ヶ月ごとになっているが担当とは会っているケースなどです。

どのようなケースであれ、銀行側が状況を把握しているか、もしくは理解してもらえるかがリスケを認めてもらえるかどうかの最大の分岐点になります。先に述べた通り、銀行が理解してくれない、もしくは自力では理解してもらうことは困難と思う場合は専門家に相談しましょう。

3. リスケ時の大切なポイント

①全金融機関で一斉スタートが原則
1つ目のポイントは、リスケは全金融機関一斉スタートというのが大原則ということです。
たとえば、9月の返済から止めるとすれば、10月もしくはそれ以降に返済停止する借入が絶対にあってはならないということです。全ての金融機関の全ての借入が対象になります。原則として、ある借入だけ返済を続けるということはあってはいけません。
なぜこのようなことが求められるかというと、特定の債権者(銀行)に対する優遇となり得るからです。たった1ヶ月遅れの返済停止であっても、1ヶ月分多く返済していることになり、優遇となるわけです。
このように特定の債権者に多く返済することを「偏頗弁済(へんぱべんさい)」と言うのですが、偏頗弁済は民事再生法や破産法でも厳しく規制されています。
もちろん、リスケそのものは民事再生法も破産法も関係ありませんが、平等の観点から偏頗弁済をしないということは当然のこととして扱われています。

②返済停止の開始月に注意
2つ目のポイントは、どの月から返済を止めるかと言うことです。
たとえば9月10日にリスケを決断したとします。9月1日から9月10日までに1本でも9月分の返済をしていれば(偏頗弁済になるため)ダメですが、していなければその月から返済を止めることは可能です。可能ですが、問題があります。その月の停止となると遅延扱いとなり、遅延金と信用に幾らかの傷がつきます。
リスケと遅延、払うべきものを払わないという点では一緒です。しかし、リスケと遅延は違うものなのです。リスケは正式な手続きを踏んで返済を止めるものであり、簡単に言えば銀行が返済停止を認めた上で行うものです。よって、遅延金は発生しませんし、広い意味では信用に傷はつきますが、遅延による信用への影響とは異なるものです。
一方、銀行の手続きを経ずに行う支払い停止は、「払うべきものを払わなかった」にほかなりません。よって、遅延金が発生し、そのような記録も残ります。よって緊急度によりますが、極力遅延扱いされずに返済を止めるのが望ましいのは言うまでもありません。

③銀行への相談順位を守る
複数の金融機関から借り入れている場合、全ての銀行にお願いをすべきですが、一つ大事なことがあります。リスケの相談をする順番です。これには鉄則があります。まずはメイン銀行から相談するということです。メイン銀行が了承したら、他の銀行に「メインの●●銀行には先に相談に行き、ご了解いただきした」と話を持っていけば、「メインさんがそう言っているなら」と、多くの場合、他の銀行は右に倣えとなります。

では、複数の金融機関と取引しているものの、特にメイン銀行を意識しなかった場合どうすればいいでしょうか。その場合、借入額が一番多いところが優先順位1位となります。では、どの銀行の借入額も大きく変わらない場合はどうでしょうか。この時は、ご自身が一番信頼している銀行から相談を始めましょう。

4. リスケ後の対応は…?

さて、紆余曲折があったにしろなかったにしろ、無事と言ってはおかしいですが、リスケが通り返済が止まることになりました。それで一件落着でしょうか?
そんなことはありません。そもそもいつまで返済を止めておくのか、返済が止まったらそれでほったらかしでいいのかとさまざまな疑問が湧いてきます。こちらについては、次回お話しいたします。大切なお話はここからかもしれません。