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【資金繰り改善】リスケはいつ決断すべき?資金繰りに悩む社長が押さえるべき基準

【資金繰り改善】リスケはいつ決断すべき?資金繰りに悩む社長が押さえるべき基準

資金繰りが厳しくなったとき、会社に現金がないとき、リスケ(返済条件の変更)を検討する。
この判断は間違っていません。しかし、ほとんどの中小企業は、資金繰りは楽ではなく、現金も潤沢とは言えません。では、「中小企業は常にリスケをすべき」なのか?
それは違います。リスケは延命のための有効な手段ですが、安易に行えば経営モラルが問われます。
だからこそ、どのタイミングでリスケを決断するか、一定の基準を持っておくことが重要です。今回は、その基準について考えていきます。

※リスケについては前回記事をご参考にしてください:返済ストップ!?融資における「リスケ」の本当の意味とは?

リスケは経常収支がプラスのうちに決断するのがベスト

結論から言うと、リスケは経常収支がプラスのうちに決断をすることが望ましいです。(理由は後ほど)
経常収支といえば、国際収支の経常収支を思い浮かべる方もおられるかもしれませんが、それとは別です。企業経営における経常収支は本業での現金の増減です。重要なのは現金で考えることです。まずは、聞き慣れないであろう、経常収支についてみていきましょう。

経常収支とは?

経常収支は、以下の計算式で計算できます。

〔経常収支=経常収入−経常支出=計上収益−運転資本の増減+減価償却費等〕

度々、営業キャッシュフローと比較されますが、営業キャッシュフローは以下の通り当期純利益から計算されます。

〔営業CF=当期純利益−運転資本の増減+減価償却費等〕

違いは、経常収支は特別損益を加味しない一方、営業キャッシュフローは特別損益を加味します。つまり、毎年、経常的に発生する資金の出し入れに注目したものが経常収支です。

経常収支の具体例

まずは簡単な例を考えてみます。
例えば、ある月(日)に100万円の売り上げがあったとします。一方、現金100万円の入金はなかった場合に、経常収支いくらになるでしょうか?答えは、ゼロとなります。反対に、ある月(日)に売り上げがゼロであっても先月(前日)の売掛金の100万円が入金されたなら、その月(日)の経常収支における収入は100万円となります。
費用も同様です。ある月に100万円の仕入れを行い、現実にその商品が手元に届いているとしても、100万円を支出していない限り、経常収支における支出はゼロです。実際に100万円を支出した時に、経常収支における支出としてカウントします。(運転資本の増減で計算されています)
このように売上、仕入れはもとより、賃金、法定福利費、消耗品費、接待交際費、運賃、地代家賃など本業を行うにあたり継続的に支払う費用も全て発生主義ではなく現金ベースで計算するのが経常収支です。

経常収支の見方

さて、この経常収支が赤字の場合、それは何を意味しているのでしょうか?
1日ごとの経常収支を算出(いわゆる「日繰り表」)した場合、業種によっては経常収支がマイナスになる日もあるでしょう。しかし、月次の経常収支を算出(いわゆる「資金繰り表」)した時、マイナスの場合はどうでしょうか。1ヶ月であれば、赤信号とは言えませんが赤に近い黄色信号です。これが2ヶ月続けば、完全に赤信号です。2ヶ月間、経常収支のマイナスが続くということは、商売をすればするほど現金が流出しているということになります。つまり、儲からない商売になってしまっているということです。

リスケの効果と経常収支の関係性

経常収支がマイナスの状態で、リスケをした場合どうなるでしょうか。残念ながら、現金流出は止まりません。もちろん、何も状況が変わらないわけではありません。最終的な現預金の増減は、経常収支から借入金の返済を差し引いたものですので、リスケをすれば流出額は経常収支のマイナス分だけにとどまります。
つまり、現金流出が続けば、いつかは資金ショート、つまり、倒産するわけですが、リスケをすることによりそれまでの残り時間が増えるということになります。ただし、リスケをする条件としては、残りの時間内に経営改善を図り経常収支をプラスにすることが大前提となります。さらに、先の話をすると、経常収支をプラスにするだけではダメで、いつかは借入金の返済を再開する必要もあります。まずは、経常収支をプラスにして、さらにそこから、借入金の返済を再開できるまでに持っていくことは並大抵のことではありません。
一方で、経常収支がプラスの状態でのリスケをするタイミングを考えてみましょう。これは本業で現金を少しずつでも稼いでいることになります。ただ、そこから借入金を返済したら現金収支がマイナスになる、もしくは、減りはしないが増えもしないという状態です。
この状態でリスケを行えば、とりあえずは現金の流出を防げるわけです。余裕を持って経営改善に取り組めます。また、目標も、返済を継続的に行える程度に経常収支をプラスにするということのみです。

以上のことから、リスケを決断するのは経常収支がプラスのうちが望ましいです。ただし、申し添えておきたいのは、経常収支がマイナスだからといって終わりだと言っているわけではありません。経常収支がマイナスからのリスケであっても、覚悟を決めて経営改善に取り組んで復活した企業はたくさんあります。決して珍しいことではなく、経常収支がマイナスだからと言っても、その時点で諦めるのは早過ぎます。ただ、経常収支がプラスのうちにリスケを決断するのが望ましいのは間違いありません。

現実的な判断基準と専門家への相談

実際には、資金繰りが厳しい、具体的には現預金が毎月減っている、という状況ながらも 「リスケはまだ早い」 「リスケをすれば銀行から新たにお金を借りることができないようになる」 と考えて、リスケの決断を先延ばしにする社長が多いのは事実です。そして、いつの間にか経常収支がマイナスになり、現預金の減少スピードが急速に進んで、やっとリスケの相談に来られる、という事業者の方が多いのも事実です。
よって、これは私の経験から言えることですが、「資金繰りに不安を感じたら、その時点ですでにリスケの検討をするべき時」という言い方をしてもいいかもしれません。もちろん、必ずではありませんが、その可能性(リスケをすべき時期にある)もあるということは十分に認識すべきです。
とはいえ、「不安を感じたらリスケ」というのは乱暴というか大雑把と思われるかもしれません。それはその通りで、本来なら経常収支を分析、検討してリスケの判断をするのが正道です。ただ、そのためには過去から現在に至る経常収支を確認できて、かつ将来の経常収支を予測できるということが前提にあります。これを行えるようにするためには資金繰り表、場合によっては日繰り表の作成が必須となりますが、それらを作成している会社は少ないのが現実です。作成の意義や方法はおいて、資金繰り表を作成していない会社が多いという現実を前提にすれば、「資金繰りに不安を感じた時にリスケを検討するべき」と私は考えています。

最後に

さて、今回はリスケをいつ決断するべきかをテーマに考えてみましたが、実際、リスケの判断時期には明確な基準もなければ、その決断は社長にとって心理的負担の大きいものです。現在の状況をどう捉え、リスケも含めてどのような判断をすべきか迷っている方々は、当社はじめ専門家の助言、支援をぜひ受けていただければと思います。
※初期相談は無料です。お気軽にご相談ください